- NVIDIAの最新グラフィックドライバ(572.XX系)で、ゲーム中のクラッシュや突然のブラックアウトといった深刻な不安定性。
- この問題は最新のRTX 50シリーズだけでなく、RTX 40シリーズやRTX 30シリーズなど旧世代GPUにも影響が及ぶ。
- 一時的な対策として旧ドライバ(例: 566.36)へのロールバックが推奨されていますが、その場合、DLSS 4 フレーム生成などの最新機能は利用できなくなるジレンマ。
NVIDIAが最新のRTX 50シリーズGPUと共にリリースしたドライバ「572.16」以降、多くのPCゲーマーが不安定な動作に悩まされています。NVIDIAはその後5つの新しいGame Readyドライバをリリースしましたが、根本的な問題は解決されていないようです。
著名なテックメディア「Gamers Nexus」が、多数のユーザーから報告されているNVIDIAドライバの問題を再現・検証する動画を公開し、大きな波紋を広げています。
Gamers Nexusによる痛烈な批判
Gamers Nexusのホスト、Stephen Burke氏は、この状況全体を「到底容認できず、完全に恥ずかしい (absolutely abhorrent and completely embarrassing)」と痛烈に批判しています。この厳しい言葉は、現状を的確に表していると言えるでしょう。
この記事では、Gamers Nexusの調査結果と一時的な回避策に加え、NVIDIAの572.XX系ドライバに関するこれまでの経緯を詳しく解説します。
問題の発端:RTX 50シリーズ登場と572.XXドライバ (2025年1月~)
現在発生しているNVIDIAドライバの問題は、2025年1月にさかのぼります。
RTX 5090発売と同時に問題が表面化
- 発端
2025年1月30日、NVIDIAは新型のRTX 50シリーズグラフィックカード(例: RTX 5090)を発売しました。 - ドライバリリース
それと同時に、最新ハードウェアに対応するGame Readyドライバ「バージョン 572.16」をリリースしました。 - 初期の報告
いち早くRTX 5090を入手したユーザーたちが、このドライバアップデート後に問題を報告し始めました。これが問題の始まりです。
RTX 40シリーズや旧世代GPUにも影響拡大
当初はRTX 50シリーズ固有の問題かと思われましたが、すぐにRTX 40シリーズのユーザーからも、ドライババージョン572.16に関する同様の問題報告が相次ぎました。
- 具体的な症状:
- ランダムなブラック スクリーン: ゲームプレイ中や通常使用時に、予期せず画面が真っ暗になる現象。
- 検出失敗: PCがグラフィックカードを認識しなくなる問題。再起動が必要になることも。
- 完全なクラッシュ: ゲームやアプリケーション、場合によってはシステム全体が強制終了してしまう現象。
3月下旬には、大手テックメディア「Tom’s Hardware」が、海外掲示板Redditのr/Hardwareコミュニティに投稿された詳細なユーザー分析を紹介。このユーザーはRTX 40シリーズを使用して572.XXドライバの問題点を調査していました。
このReddit投稿へのトップコメントは、RTX 5080の初期購入者からで、RTX 40シリーズユーザーと同様のクラッシュやブラック スクリーンの問題が発生しているというものでした。さらに、別のユーザーはRTX 3070でもクラッシュが発生し、ドライバのロールバック(旧バージョンに戻すこと)が必要だったと報告しており、問題が当初考えられていたよりも広範囲に及んでいる可能性を示唆しています。
一時的な解決策はドライバのダウングレード
Redditの投稿者も提案しているように、NVIDIAドライバを「バージョン 566.36」(2024年12月5日リリース)にダウングレードすることで、これらの問題が軽減されるようです。
ロールバックのデメリット:最新機能が利用不可に
しかし、RTX 50シリーズ登場前のドライバにロールバックすることには、いくつかの大きなデメリットが伴います。
- 利用できなくなる主な機能:
- DLSS 4 Multi Frame Generation (MFG): AIを利用してフレームを生成し、フレームレートを大幅に向上させる最新技術。RTX 50シリーズの大きな売りの一つです。
- DLSS 4 Overrides: ゲーム側が公式対応していなくても、ドライバ側でDLSS機能を強制的に適用する機能(※機能名は仮定)。
- 最新ゲームへの最適化: 566.36以降にリリースされた、DLSS技術などを採用する多くの新しいゲームへのドライバレベルでのサポートや最適化。
NVIDIAがCES 2025の基調講演で「RTX 5070はRTX 4090並みの性能」と主張できたのは、このMulti Frame Generation (MFG) 技術があってこそでした。
しかし、現状では多くのユーザーがこの目玉機能を使えない、あるいは使うと不安定になるというジレンマに陥っています。これでは、高価なRTX 50シリーズGPUを購入した意味が薄れてしまいます。
Gamers Nexusによる問題の再現と検証
Gamers Nexusは、週末に公開した動画で、これらの問題がNVIDIA側に起因することを検証し、最終的に証明しました。
特定環境下でクラッシュを再現
- 検証方法
Gamers Nexusは、ユーザーから問題が報告されている構成に近いハードウェア環境を構築してテストを実施しました。 - テスト環境例
NVIDIAドライバ「572.83」、GPU「RTX 4070 Super Founders Edition」を使用。
不具合を誘発しやすい条件
Gamers Nexusの検証によると、以下の条件が組み合わさると、これらの不具合が特に発生しやすくなるようです。
- デュアルモニター + G-Sync環境: NVIDIAの可変リフレッシュレート技術「G-Sync」を有効にした状態で、2台のモニターを使用している場合。
- NVIDIA フレーム生成 (Frame Generation) の有効化: DLSS 3 や DLSS 4 のコア技術であるフレーム生成機能を使用している場合。
- 使用している映像出力ポート: グラフィックカード上の特定の映像出力ポート(DisplayPortかHDMIか、どのポートか)が影響している可能性。
- その他の要因: 場合によっては、DLSS(アップスケーリング技術)やNVIDIA Reflex(低遅延技術)が問題を引き起こしている可能性も示唆されています。
Gamers Nexusが提案する一時的な回避策
NVIDIAが根本的な修正を行うまでの間、Gamers Nexusはいくつかの回避策を提案しています。これらは問題を完全に解決するものではありませんが、安定性を向上させる可能性があります。
- 映像ケーブルの差し替え(最も簡単):
- 方法: グラフィックカードに接続している映像ケーブル(DisplayPortまたはHDMI)を、別の空いているポートに差し替えてみる。
- 理由: 特定のポートが問題を引き起こしている可能性があるため、ポートを変更することで改善する場合があります。
- DisplayPortからHDMIへの変更:
- 方法: 現在DisplayPortケーブルを使用している場合、可能であればHDMIケーブルに変更してみる。
- 理由: 接続規格の変更が安定性に影響を与える可能性があるためです。
- NVIDIA G-Syncとフレーム生成の無効化:
- 方法: NVIDIAコントロールパネルやゲーム内設定で、G-SyncおよびDLSSフレーム生成機能を一時的に無効にする。
- 理由: これらが不具合の引き金になっている可能性が高いため、無効化して安定するかどうかをテストします。
注意点: RTX 50シリーズの登場以降、すでに6つのバージョンの572.XX系ドライバがリリースされていますが、根本的な解決には至っていません。NVIDIAがこの問題の修正を急いでいるようには見えない、という指摘もあります。
ゲーム開発元も旧ドライバを推奨する異例の事態
この問題は、NVIDIA製グラフィックカードの購入者だけでなく、最新技術を活用したいゲーム開発者にとっても頭痛の種となっています。
「inZOI」「The First Berserker: Khazan」での推奨
市場に出たばかりの少なくとも2つの新作ゲーム、「inZOI」と「The First Berserker: Khazan」の開発元が、プレイヤーに対して問題を回避するためにNVIDIAドライバをロールバックするよう推奨するという、異例の対応を取っています。
inZOI の推奨
v0.1.2ホットフィックスの告知で、NVIDIA GPUのシリーズごとに最適なドライババージョンを案内しています
例: RTX 40シリーズにはバージョン XXX.XX を推奨、など。
The First Berserker: Khazan の推奨
こちらも同様に、安定動作のために特定の旧ドライババージョンを使用するよう推奨しています。
最新機能利用とのジレンマ
これらの推奨に従ってドライバをロールバックすると、前述の通り、DLSS 4フレーム生成などの最新のNVIDIA機能を利用できなくなってしまいます。
これは、最新GPUの性能を最大限に引き出したいプレイヤーにとっても、最新技術をゲームに取り入れたい開発者にとっても、理想的な状況ではありません。
まとめ:NVIDIAによる根本的な解決策が待たれる状況
2025年4月現在、NVIDIAの最新Game Readyドライバ(572.XX系)には、RTX 50シリーズだけでなく、RTX 40シリーズやそれ以前の世代のユーザーにも影響する深刻な不安定性の問題が存在します。Gamers Nexusのような第三者機関によって問題が再現・検証され、その深刻さが浮き彫りになっています。
一時的な回避策として旧ドライバへのロールバックが推奨されていますが、これは最新機能の利用を犠牲にするトレードオフを伴います。さらに、ゲーム開発元までもが旧ドライバの使用を推奨するという異例の事態に至っており、問題の根深さを示しています。
多くのPCゲーマーが、NVIDIAがこれらの問題の原因を特定し、安定した最新ドライバを早急にリリースすることを強く望んでいます。今後のNVIDIAの対応と、修正版ドライバのリリース情報に注目が集まります。

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